JBLハーツフィールドを中心としたゴージャスなオーディオシステムをお使いの世田谷のMさんのお宅を訪問させていただきました。この圧倒的な天井高に文字通り圧倒されますね。
このハーツフィールドはオリジナルの初期型とのことで、バブルバックの375と、150-4Cウーファによる2ウェイ構成です。Oさんは高域拡大のため、カンサウンドラボ製のTS001&TS002を追加しています。
GWに一度訪問させていただき、その後、MさんにはDVAS本社にも遊びに来ていただきました。相互訪問させていただくと、お互いがどんなサウンドを出しているのかが良くわかりますので、不満点などを説明する際にも共通認識をしながら語り合うことができる。
Oさんのシステムはもちろん素晴らしい音なのですが、375とTS001のつながりが乖離しているような感じを受けたので「075を追加すると一層鮮度の高い音になるかもしれませんよ」的な話をさせていただきました。何しろ、DVASの第一システムは375+537-500のミッドレンジに8KHzで075をクロスさせ、その上に13KHzでクロスさせたリボンツィータを装備しているというOさんのシステムと非常い近いユニット構成なんです。そういうこともあり、Oさんもなるほど!と感じていただけたそうです。
DVAS本社を訪問いただいた翌日に、「早速、075を追加してみたら、素晴らしく良い感じになった!」とOさんから連絡をもらいました。
もともと075を所有されており、ハーツに組み合わせるためのネットワークもお持ちだったことから、すぐに試してみたそうです。素晴らしい行動力ですね!
その後、私の075のホーンはアルミじゃないことに言及され、あれはなんだ?という話になりました。
私の075は菅野先生の真似をしてアルミのオリジナルからケンリックサウンドの砲金製に換装してあります。
アルミから砲金に変更することで、SN感が改善され少しざらついた075のサウンドがしっとりとする的な説明をさせてもらいました。砲金は経時変化で酸化してしまい外観が大きく変化しますので、導入するのなら、その心配のないステンレス製をお勧めしました。
するとその翌日にはケンリックのステンレスホーンを発注したと連絡が入ります。
いやあ、Oさんの行動力と決断力、感動的です!
とはいえ、075のホーンの換装はそれほど簡単ではありません。手順を間違えると振動板にダメージを与えることがあります。075を入れてみては?なんて提案した手前もあり、結果を確認したかったので、ホーンの換装をしましょうか?と提案させていただき、再びOさんのリスニングルームを訪問させてもらいました。
Oさんの075はフランジのない旧型で、私のモノと同じです。
ちゃんとしたバッフルに装着されていましたので、まずはそこから外して裸にします。
確認したところ、Oさんの075は写真のようにワックスシールが残っている状態で、過去一度も開けられていないことがわかります。最初にやるのは、そのJBLのワックスシールを外すことです。強度のある千枚通しを使って丁寧にシールを剥がすとプラスネジの頭がみえてきます。シールといっても固形ワックスなので、ペロッと剥がれるわけではなく、砕きながら取り除いていく感じです。
次に背面のJBLのエンブレムシールを剥がして中央のイコライザーを固定しているマイナスビスの頭を露出させます。この作業がホーン交換の肝です。ネジが露出したあと、本体とイコライザーをしっかりと抑え、イコライザーが回転しないように気をつけながら、マイナスネジを取り外します。絶対にイコライザーを回してはいけません。ネジで固定された状態の場合、イコライザーと振動板は密着しており、イコライザーを回してしまうとその力で振動板も一緒に回ってしまい、結果、取り返しのつかないダメージを与える可能性があります。
必ずエンブレムシールを剥がしてマイナスネジを回すことが肝要です。ネジがはずれると、イコライザーがぽろっと外れます。
振動板が露出しますので、ほこりなどを確認して刷毛などでそっとほこりを払います。
ここで外周ホーンを外したくなるのですが、それをやってはいけません。交換するステンレスイコライザーを先に装着します。それから外周ホーンを外して、ステンレスに換装という手順になります。
イコライザーとホーンの換装はどちらが先でもよいのですが、両方いっぺんに外してしまうと、何かの拍子で振動板の位置がずれたり、振動板が外れたり等の予期せぬ不具合が起きる可能性があります。イコライザーを先に換装すればイコライザーが振動板を固定してくれますので、外周ホーンを外しても振動板がずれたり外れたりることはありません。その逆もしかりです。
それなりの道具も必要ですから、腕に覚えのある方以外は専門家に交換作業をゆだねたほうが安全だと思います。
換装の終わったステンレス製075です。カッコいいですよね!左側はSUZUKI ELECTRIC製の075用特注ネットワークです。
サウンドは予想どおり、一層透明感の高い静かな音になりました。もちろん、075の切れ味はそのままです。
あらためて375と075の相性は鉄板だなああと思いました。
今回は装置の伝送特性の確認もさせてもらいました。
DVASでは測定用マイクのデファクトスタンダードであるアースワークスM30を使ったシステムの伝送特性確認サービスをしています。
データを測定しそれをOさんにご確認いただきながら、375のレベルや075のレベルを追い込んでいきます。
Oさんのシステムはビンテージスピーカにありがちな1KHz近辺の張り出しもなく、良い音の典型例ともいえる右肩下がりのとても滑らかな特性になっています。これは極めて高い天井高の威力でしょう。
最終的には聴感で追い込むのですが、データ測定と併用することで現状の把握をしながら、とんでもない調整になってしまうのを回避することができます。
この状態でCDの音を聴かせてもらいました。
OさんはEMT927を中心としたアナログ再生システムをお使いで、ほとんどはレコードを楽しまれているのですが、チューニングの際には特性の癖がなく本質的にワイドレンジなデジタル再生システムでの確認をおすすめしています。OさんのCDプレーヤは名器フィリップスLHH2000です。私もちゃんとした環境で聴くのは初めてでしたが、いやあ、素晴らしい音です。EMT927システムによるアナログに一歩も引けをとりません。これほどのCD再生はなかなか聴けるものではないです。CDで素晴らしい音が出るようにチューニングできれば、アナログで悪いわけがなく、菅野録音の数々や、竹内まりやの告白など見事な音です。さらに最後に聴かせていただいたクリムゾンキングのエピタフは、普段ロックを聴かない私ですら感動するほどの素晴らしさでした。
オーディオは芸術と科学技術の融合ですから、聴感とデータ、それらをバランス良く取り混ぜながらチューニングしていくことで、普遍的でありながらもオーナーの個性を反映した音を創っていけると思います。
DVASでは、そういったチューニングのお手伝いもさせていただきますので、ご興味のある方はお問合せください。
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