オーディオアンプの評価をするときに重要な静特性はたくさんありますが、わかりやすいのはやはり周波数特性ではないでしょうか?
人に聴こえる周波数の上限は20KHzと言われていますが、いやいや皮膚はもっと高い周波数まで感じていて、ゆえにハイレゾのスーパーハーモニック領域の再生は意味があるとも近年は言われています。
私自身、DACの出力回路を設計していた時代は100KHzくらいであれば良かろうと考えており、デジタルノイズの追放の意味もあって、DAC後段のアナログ回路の遮断周波数は100KHzあたりに選んできました。デジタルフィルターを使用するのが常識の時代でしたから、CD登場直後のようなカットオフ20KHzで9~11次のアナログフィルターなどは使ったことがありません。
100KHzの遮断特性で問題があったとは考えていませんが、では、DACのように高調波ノイズを含まない純粋なアナログアンプはどの程度の帯域があれば良いのか?この点に関して、かつてとても驚いたことがあります。それはスペクトラルのアンプです。このアンプはオーディオアンプの周波数の概念を大きく越えて、NTSCのビデオ信号が楽々ととおるほどの周波数特性をもっていました。あまりにも広帯域すぎて、MIT製のフィルターの入ったケーブルを使わないと発振するともいわれており、ケーブルまで指定した最初のアンプだったと思います。
あまりにも広帯域すぎると発振する可能性もあることから、帯域制限のかけ方が設計者の腕の見せ所、というのがアナログアンプ設計の現実だと私は思っています。
DVASがアナログアナライザとして使っているオーディオプレシジョンのアナライザですが、機種にもよりますが、測定できる帯域は200KHz程度までで、さすがのオーディオプレシジョンでもMHz帯までの周波数特性を測定することはできません。
まあ、オーディオプレシジョンのアナライザの真骨頂は可聴帯域+αの高度で精密な測定にあるわけで、周波数特性だけに限定すれば高性能な発振器とオシロスコープがあれば実測が可能です。
正弦波で測定することが一般的ではありますが、矩形波応答を観測することで、正弦波だけではわかりにくいアンプの安定度を観測することができます。
この辺りは私が勝手に師とあおぐテクニカルブレーンの黒澤社長のYoutube動画で詳しくわかります。
実際にアンプを評価をやっていくと、10MHzを越える帯域の挙動がアンプの動作に大きな影響を与えることがわかったりするので驚きます。
デバイスにもよりますが広帯域のユニットアンプを使いこなすには可聴帯域をはるかに越える周波数特性を観測できる測定器が必須です。
オーバーシュート、アンダーシュートのない綺麗な矩形波応答を実現しつつ可能な限り周波数特性を広帯域に保つ、そういうことを目指していくと、結果的にアンプの周波数特性はすくなくとも1MHzくらいまではフラットである必要がありそうに感じます。
ちなみに上の写真は発振器の出力を直に確認している様子で、DVASのアンプを経由しているわけではありません(笑)
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