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Model3の進捗状況その2

dvas9900

更新日:2024年12月7日

6月に進捗状況を報告させていただき、OTOTEN2024で一次試作を公開しました。そして先日の秋のヘッドフォン祭2024で筐体こそ二次試作となり電源部も披露いたしましたが、その段階でもアンプが入っていないという状況でした。

毎年1機種ずつリリースしていきたいというのがDVAS設立時の目標ではありましたが、すでに12月。どうやらModel3はその目標を達成できそうにありません。。。


現状をお話しますと、まず回路面では基礎検討レベルでは行ける!と踏んだ回路のプリント基板を起こし、表面実装パーツでユニットを製作いたしました。これで決まり!のはずだったのですが、どうしても満足のいく性能になりません。


Model3は無帰還アンプではなく、完全差動の高帰還アンプとして組んでおり、静特性が良くて当たり前で、さらに音も良いことを目標に設計してきました。しかし、その性能、特に歪と最大出力が納得いくレベルで確保できません。もともとの回路設計にしがみつき、これを良くなるように改善するというのも一つの考えですが、今回は潔くその回路を断念し、全く別の回路に変更しました。


アッテネータの挿入位置からアンプの基本的な構成まで一新したことになります。それを今年も残り三カ月という段階で断行したわけですから、年内発表に間に合うわけもありません。。。


Model1のユニットを複数流用して組み上げた試作アンプは、狙いどおりの素晴らしい性能であることが確認できました。ようやく納得のいくアンプができたわけです。回路をまとめ基板パターンを起こし、アンプユニットとして組み上げ、性能確認までは終わりました。試作段階を凌ぐ申し分ないアンプができました。アンプ基板を筐体に組み込むと下記のような状態になります。まだ、仮ですが。。。




これですめば良かったのですが、実はもう一つ、極めて大きな仕様変更実施しました。


プリアンプの最も重要な機能は音量調整です。


ゆえに、アンプの肝ともいえるのは音量調整回路、要はボリュームです。この肝の部分の仕様変更を決断いたしました。


Model3は抵抗切り替え式の左右独立アッテネータを組み込むと、いぜんブログで書きました。

当初量産に使うつもりでいたのは国産の多接点ロータリースイッチです。これと表面実装型の薄膜抵抗を組み合わせてアッテネータを製作する予定でした。実際にロータリ―スイッチを手配し、抵抗基板を製作。それらを組み合わせて秋のヘッドフォン祭2024で展示した試作機に組み込んであります。

ちなみに上の写真に写っているのは、その国産の多接点ロータリースイッチのアッテネータです。


秋のヘッドフォン祭2024ではゲイン切替機能がアクティブではなかったので、実は何人かのお客さまから、音量調整がやりにくいという指摘を受けました。アンプの入っていないゲインゼロのアッテネータであっても、現状の接点数では使いやすいとは言えないことが明らかになったわけです。ゲイン切替が機能し、さらに最終状態ではアッテネータの挿入損失(回路的に-6dB発生する)もありますが、アンプのゲインもありますので総合的にはボリュームを最大にすればゲインはプラスになります。音は良いけど音量調整がやりにくい、では良いプリアンプとは言えません。


とはいえ、Model3の外形寸法では今のアッテネータ以上の多接点タイプは使えない。なんとか全体のゲイン設定でやり切るしかないか?と思って矢先、あるパッシブプリの内部写真をみつけました。


世界的にも定評のある高音質で有名な製品です。


この製品もロータリースイッチによるアッテネータが組み込んであるのですが、定番のセイデン製ではありません。凄く小さいのです。この大きさならせいぜい23接点だろうと製品の仕様を確認して驚きました。なんと47接点もあるというのです!セットの大きさから類推して、当初Model3に搭載する予定だったロータリースイッチと同じくらいの外形です。この大きさで47接点のものなど聞いたことがありません。

色々調べていくと、この製品に搭載されているロータリースイッチの正体がわかりました。当たり前ですが現存していたのです、Model3に搭載できる大きさで、47接点もあるロータリースイッチが!

私が知らなかっただけでした。。。

早速、メーカーに打診すると、こころよく試作に応じてくれました。待つこと二カ月、ようやく手に入ったスイッチをみて、私は大きな感動をおぼえました。アッテネータの操作感触はCELLOのプリアンプに極まると思っているのですが、それに勝るとも劣らない軽やかで柔らかい操作感です。価格は当初のスイッチからけた違いに高額となってしまいますが、これはなんとか使ってみたい。いや、これを使わなくてはModel3の存在価値はない、くらいに気持ちが高まりました。


さらにこのスイッチを使うとアッテネータに1/2Wクラスの大型の抵抗を使うことができます。いわゆる高音質で定評のある有名な抵抗が射程圏内にはいってくるということです。もちろん、もともと使うつもりの表面実装型に比して本当に優れているかどうかは、実際に試してみないとわかりません。表面実装型はなにしろリード線がありませんので、そのアドバンテージはハッキリあると思っています。

DVASは基本的にアンプや電源に使用する小信号レベルの抵抗はすべて薄膜の表面実装型としており、精度も0.1%のものを全面採用しています。表面実装型の薄膜抵抗であれば、そんなパーツも容易に入手できます。


アッテネータを構成する場合、E24はもちろんE48系列の抵抗でも、偏差が大きくなってしまい完成後のゲイン偏差を±0.1dB以内に収めることはできません。E96系列、できればE192系列の抵抗が必要なのです。もちろん精度は±0.1dBです。

表面実装型であれば±0.1精度でE96系列はもちろんE192系列の抵抗でも難なく調達できますが、通常の大きさのリード付き抵抗、しかも音質で定評のあるE96系統以上のリード抵抗など、どこのサイトを探してもみつかりません。メーカーの製品の仕様としては存在しますが、実際に売っているサイトがない。そもそも、音質に定評のある抵抗で通常入手できる精度は±1%です。


これはもうメーカーに特注するしかないわけです。そこで、まずはどの抵抗にするのかを決めなくてはなりません。E192系列のラインナップがあり抵抗値偏差±0.1%でリード抵抗を選定するというのは簡単なことではありません。いくつかの抵抗を検討し、あるブランドを選択しました。MOQという概念がありますので、とりあえず2台のModel3の分だけ、のような都合の良いオーダーはできません。Model3を何十台も作らなければpayしない数量を購入することになります。見積もりを出してもらいましたが、抵抗とは思えないようなクラクラする価格です。とはいえ、背に腹は代えられませんので、意を決して必要な全定数の抵抗を特注することにしました。

サラリーマン時代にこれを購入したいと上司に言ったら速攻で却下されたと思いますが、今は私が納得すればどんなパーツも使うことができます。全くもって、良い立場になりました(笑)

まだ特注した抵抗が入荷しないので、最終的なアッテネータを組み上げるのは少し先の話になってしまいます。



というような状況となってしまい、Model3の年内発売はもちろん正式な発表も来年になってしまうことが確実となりました。とはいえ、製作作業を鋭意進めており電源ユニットもトランスを組み込み導通試験などを実施しています。これはOTOTEN2024で展示したシャーシですが、最終的にはさらにリファインする予定です。


開発の時間が長引けば当然開発費だけがかさみ、その製品の売り上げは立たないわけですから、事業的にも本来はインパクトがあります。いわゆる機会損失ですね。ただ、やはり納得のいかないアンプを世にリリースすることは出来ませんので、必要な時間をしっかりかけてModel3をリリースしたいと思います。


発表まで、今しばらくお待ちください。



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