Model1の回路には調整部分はありません。比較的目立つバラつきが発生するのはLEDを基準電圧としてる無帰還レギュレータ部分です。これはLEDのVfに依存しますし、それを6個もシリーズ接続していますので搭載している全8電源のすべての電圧は0.5V程度はバラつきます。世の中にはこれを厳密に管理している製品もありますが、Model1のアンプ部分はそもそも電源電圧の定常的なバラつきが動作や出力に現れることはありませんので問題とはなりません。
厳密な電圧管理が必要なのはLED用の電源電圧とバイアス用の電圧です。ここには外部の基準抵抗で出力電圧を可変可能な超ローノイズのレギュレータICを使用し、出力電圧を決定する基準抵抗には0.1%級の薄膜抵抗を使っていますので、ほとんどバラつきはありません。
アンプのゲインを決める抵抗にも0.1%級の薄膜抵抗を使っていますから、この部分でのバラつきは心配しなくても済んでいます。イコライザー回路に使っているコンデンサも小型のものは2%級のパーツを使っており、コンデンサとしては下限に近い偏差のパーツです。
ただし、一か所だけ2%級のコンデンサが入手できないパーツがあります。もちろん、形状を制限しない、コストを制限しないなどの条件を与えれば、高精度なコンデンサが存在しないわけではないのですが、表面実装型のフィルムコンデンサを前提として選択した場合、10%級のパーツを使わざるを得ない箇所が一か所あります。回路設計でより偏差の少ない定数に変更することももちろん出来るのですが、そうなると帰還回路全体のインピーダンスがあがってしまい、それはそれで音質への影響が出てきます。
イコライザー用のパーツですから、ここの偏差が大きければカットオフ周波数が設計値からずれて、いわゆるRIAA偏差が大きくなってしまいます。ただ、それだけではなくて、例えば右のアンプにー10%、左のアンプに+10%の偏差のあるパーツを使ってしまった場合、RIAAカーブだけではなく1KHzのゲインが1dB以上ずれてしまうのです。もちろん、1KHzだけではなく、だいたい500Hzから10KHzの間でゲイン差が発生してしまいます。こうなるとステレオ再生ではセンター定位に聴感でもわかるずれが発生してしまいますので、無選別でこの偏差のパーツを使うわけにはいきません。
Model1では、このパーツのみLCRメータを用いて実測し、絶対容量が±2%以内で、最終出力の左右のレベル偏差が0.1dB以内になるものをペア組して使用しています。10%の偏差のパーツから2%のパーツを選別し、さらにペア組するとだいたい30%くらいの歩留まりとなります。70%はModel1には使えないわけです。となると事実上、このパーツのコストは原価の約3倍となり、かなり高額なパーツとなってしまいます。もっと高精度なパーツがあると良いのですが、半導体だけではなく表面実装型のフィルムコンデンサも供給状況は芳しくないようで、悩ましい状況です。
可聴帯域の重要な領域に大きな影響のあるパーツですので、ここの選別だけは譲れないのです。
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